
三日目の朝のことだった。
「A君、例の件、先方からOKの連絡があったよ、急なことですまんが、君、行ってくれるか」
「北部の○○市ですね、環境問題の調査・・、はい、わかりました、行ってまいります」
「教授、わたくしもA先生のお供をいたしましょうか」
「いや、小山(秀子)さんは私と此処に残ってくれたまえ」
こうしてA男は一人でこの国ご自慢の磁浮列車に乗って北へ向った。
怖れていたことが現実になった。秀子は内心そう思った。
鬼原教授と二人きりになることを怖れていたのだ。それは教授が日頃から自分に邪な思いを寄せていることを知っていたからである。
一度、こんなことがあった。大学のコンパの二次会の後、ホテルに強引に誘われたのだ。
その時は秀子が丁重に断って事なきを得たのだが、そのとき以来、彼女は教授に対する警戒心を解いていないのだ。
しかし、ここは日本を遠く離れた外国の旅の空の下である。ひとり逃げて帰るわけに行かない。それが教授のつけ目だったのだろう。
助手のA男が去った後、教授は秀子を地獄網にどんどん追い込んでいく。
「小山さん、ご苦労だったね、お陰で今回の出張の目的はほぼ達成したよ」
「教授、ご講演は好評でしたわァ、割れるような拍手でしたもの」
「いやいや・・アハハー・・、あとは研究機関の表敬訪問をいくつか残すだけだから、気楽にいきましょう、ね、気楽に、小山さん」
この日、教授は秀子を伴って、この国の名所旧跡をあちこちめぐった。

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